【第4回】日本アマチュアオーケストラ連盟(JAO)活動論
〈JAOは青少年から高齢者までのライフサイクルをカバーし、生涯教育の基盤が整いました。〉
公益社団法人 日本アマチュアオーケストラ連盟(略称:JAO)は、1972年に23団体で結成されました。ブラスバンドや合唱そしてマーチングバンドはもちろん、演劇やバレエにいたるまですべて全国連盟があるのに、なぜかオーケストラだけはプロ・アマ問わず全国組織がありませんでした。
連盟の設立によって仲間の存在を知り、その悩みや障害が、実は自分たちの問題とほとんど共通していることにお互いが驚きました。自分たちの地域における活動はまだまだこんな点が足りないとわからせてくれるのは、こうした全国の仲間だったのです。そして一次元から二次元三次元へと座標軸を持つ活動ができるようになりました。
〈1987年3月〉
JAOは創立以来、文化庁はじめ課区関係諸機関の協力で、地味ながら“音の連携”を保ってきた。しかし、昨今の音楽愛好家の急増や国民生活全般の状況から、成長を続けるアマチュアオーケストラ活動に対し、マクロ的視野に立ち、かつ文化活動の理念を尊重して後援を惜しまぬ企業法人の出現が待ち望まれていた。
そうした折、1980年から始まったトヨタ自動車株式会社との後援提携は、ただ単に活動資金面を支援してもらうスポンサーというだけの関係でなく、一般的な社会生活の中で企業活動が、社会教育活動、市民活動と十分ジョイントでき得るものであり、創造的なコミュニティーライフの輪が広がることが、この後援提携の主眼である。
〈1980年3月〉
『トヨタ青少年オーケストラキャンプ(略称:TYOC)』は、JAOが1973年から毎年各地で開催してきた『全国アマチュアオーケストラフェスティバル』の二日間の日程では、技術研修、シンポジウム、合奏練習、友達づくり等、あらゆる面で未消化になってしまうという理由から、1985年から青少年独自の事業として開催され、特に“ふる里の活動を活性化するための研修”という大前提を打ち出したところから、中央より遠隔地の参加者が目立った。
このように実利を前面に出したTYOCであったが、本当の意味での実利はその副次効果とも言うべき青少年自身の緻密な企画力、果敢な実行力が準備期間や開催期間中に育ってきたということである。『一流のプロの先生に親しく手をとって教えてもらえる』というだけでは楽器会社や楽器店の開催する講習会と何ら変わるところはなく、そうしたレベルから一歩進んだ段階への変容が見られた。彼等は悩み、口論し、長電話をし、手紙のやりとりの中から自分たちの意図を少しずつ構築していった。彼等にとってなによりも得難いもの、つまり新しい友人との出会いがTYOC開催の推進力になったことは間違いのない所であるが、彼等自身のTYOCがそこにあり、とかく陥りがちな『据え膳青少年活動』はそこにはなかった。
〈1987年3月〉
TYOCは世界でも珍しい音楽プログラムで、技能的な面でのオーディションがありません。オーディションのかわりに、自分の所属するオーケストラの指導者の推薦が必要です。楽器が上手であることは確かに必要なことですが、それよりももっと大切なこと、つまり自分の住んでいる故郷(ふるさと)で、今後音楽活動を継承していく人材であるかどうかということです。ブロになるための登竜門で終わる音楽プログラムではなく、社会に還元されていくような方向性が必要なのです。
〈2007年12月〉
TYOCでは練習や生活そして開会式・閉会式といったセレモニーにいたるまで、すべて青少年の手で運営されます。全国から集まる誇り高い青少年はそれぞれ地元の俊秀で、運営会議は毎晩深夜まで紛糾しました。それでも、自分たちで運営しているという自覚が常に活路を見出して、どんな難問にもひるまない自信を全員が持つようになったのです。
『学んだことを故郷に持ち帰ろう』というTYOCの精神は、その軸足をあくまで地元の活動に置いています。オーディションによって選別されない青少年が、地域文化活動のオピニオンリーダーとして将来活躍する素地を育成することがこのTYOCの最重要課題なのです。
JAOの活動範囲に、40歳以上の中高年を対象とした、高円宮メモリアル『日本マスターズオーケストラキャンプ』が、“オーケストラ人生の全楽章運動”というキャッチコピーを掲げて、2000年から開始されました。わが国の高年齢化にともない、人生の果実というべき年齢になってもさらに音楽的な深みと向上のために、2泊3日の日程で毎年開催されている事業です。これでJAOは青少年から高齢者までのライフサイクルをカバーし、生涯教育の基盤が整いました。
JAOのオーケストラ音楽活動が、今後世界の青少年や社会に対しての浄化装置やクッションの役目を果たし、さらに言語を超えた地球語になりますよう、これからも一歩一歩頑張りたいと思います。
〈2004年6月〉
ヨーロッパでは毎年無数の音楽祭が開かれていて、プロを目指すための青少年音楽祭や、絵画や演劇を含む広範囲な芸術祭がごく普通に、しかも頻繁に開かれています。日本でも私たちJAOは、毎年『全国アマチュアアーケストラフェスティバルを』を開催していますが、私の本来の夢はなかなか実現しません。その夢とは、一週間くらいのスケジュールで人々が次第に集まってきて、今日は弦楽合奏をやろう、管楽器の人は野原でキャンプしながら思い切り音を出そう、あっちの小ホールでピアノ協奏曲の練習があるよ、そして週末には大編成のオーケストラが響き渡るという夢です。それは美しい小さな町における音楽祝祭日で、50歳以上のマスタークラスから小学生まで楽しむことはできないだろうか。
家族で観光地に行くのもよいが、毎年元気な仲間の再会と、子どもたちの成長を確かめられるようなフェスティバル。誰か実現してくれませんか。
〈2009年6月〉