〈ポストコロナ時代の音楽活動-アジア〉 Vol.6

香港からのレポート

 新型コロナウィルスのパンデミックの蔓延により、香港特別行政区政府は、旧正月休暇直後の2020年1月下旬から、全ての学校の対面授業と学校活動の停止を発表しました。また、行政区政府のレジャー・文化サービス部(LCSD)は、ほとんどの文化・レジャー施設を一時的に閉鎖し、これらの施設で開催されるレクリエーション、スポーツ、文化プログラムをキャンセルしました。

 香港児童交響楽団(HKCSO)は、ライブ演奏がトレーニングシステムの中核であるため、2月の1回のコンサート、4月の2回のコンサート、夏に予定されていた東南アジアツアー、そしてリハーサルを含むすべてのイベントを中止せざるを得ませんでした。

 状況が安定してきた6月には、コンサートホールやリハーサル会場は一定の制限を設けて再開することができました。HKCSOの団員は主に子供たちであるため、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、安全対策が講じられました。オーケストラの団員やスタッフには必ず体温測定を行い、マスクの着用を義務付けています。リハーサル室に入る前に、各団員は手を消毒しなければなりません。各リハーサル室には消毒剤(消毒用アルコールハンドジェル、消毒用ウェットティッシュなど)を用意しています。リハーサル室の中では、座席間の距離を最大限にとるようにしています。行政区政府から提案されているように、1グループは4人まで、1グループあたり1.5m以上の距離を保つようにしています。管楽器の団員が演奏する際にはマスクを着用することができないため、飛沫を防ぐために各団員の間を仕切るための衝立を設けています。使用後の清掃は各自の責任で行っています。また、息に含まれる水蒸気の結露などで楽器内に溜まった唾液を洗浄するための容器や洗浄用品も各自で用意する必要があります。

 しかし7月、コロナウィルスの急激な局地的な悪化により、さらに2ヶ月間、すべてのオーケストラのイベントを中断することになりました。9月と10月に予定されていた2回の演奏会は、再度予定を変更する必要がありました。

 9月下旬には、状況が好転してリハーサルと演奏会が再開されました。幸いなことに、11月14日に予定されていたコンサートは、香港シティホールでの公演を成功させることができました。香港のピアニスト、ヴァネッサ・ウォンとの共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を、香港のピアノグループ、デュオ・ピン&ティンとの共演でメンデルスゾーンのピアノ協奏曲ホ長調を演奏しました。

 また、副指揮者のチャン・オイチンとレジデント・コンダクターのジェフ・レオンが指揮するベートーヴェンの「エグモント序曲」と「交響曲第8番」を同コンサートで演奏しました。観客は収容人数の50%にとどまっていましたが、この厳しい時期に聴衆や友人との交流を深めることができた貴重な機会となりました。

 私達は、来たる2021年を楽しみにしています。皆さまの健康を祈りつつ、また近いうちにステージでお会いできることを願っています。