タイと日本の青少年オーケストラによる交流演奏会
日本 ⁄ イマヌエル オーケストラ・岐響ジュニアオーケストラ
2025年10月19日(日)
サラマンカホール
◆岐響ジュニアオーケストラ
〈指揮〉古宮山 和夫
〈曲目〉モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
◆イマヌエル オーケストラ
〈指揮〉鈴木 淳
〈曲目〉エルガー:弦楽セレナーデ
アンダーソン:プリンク・プランク・プルンク
◆合同オーケストラ
〈指揮〉古宮山 和夫
〈曲目〉モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」

2025年10月、“微笑みの国”タイのスラム街から誕生した「イマヌエル オーケストラ」が来日ツアーを行い、JAO会員の「岐響ジュニアオーケストラ」と合同で交流コンサートを開催しました。
「イマヌエル オーケストラ」の来日公演は2023年に続いて2回目で、今回は20名の若者たちが参加。約20日間の日本滞在期間中、大阪、名古屋、岐阜、東京などで公演を行い、また各地で様々な交流の機会も体験しました。
ここでは、岐阜県での公演「イマヌエル オーケストラ・岐響ジュニアオーケストラ 合同演奏会」をレポートします。タイと日本の交流の懸け橋となったコンサートの様子を、インタビュー映像も交えてお伝えします。
「イマヌエル オーケストラ」について
最初に「イマヌエル オーケストラ」についてご紹介します。
タイには多くのスラム街が点在し、その中でも最大規模のスラム街が首都バンコクのクロントイ地区にあります。
このクロントイ・スラムに赴任したノルウェー人宣教師が、2000年に教会の協力を得て音楽教室「Immanuel Music School」を開講しました。そして、ここで学ぶ子どもたちによる演奏団体「イマヌエル オーケストラ」が2015年に結成されました。
将来の選択肢が極めて限られていた、スラムの子どもたちの自立と将来の希望のために、ここでの音楽教育は無償で行われています。
スラムでは深刻な貧困と差別、そして麻薬や犯罪の問題が身近にあります。しかし、そこで育つ子どもたちと音楽との出会いが子どもたちの人生を変え、生きる力を育む活動が展開されました。
そして地道な活動が広がりを見せ、創立から25年経った現在は60名ほどの子どもたちが音楽を学ぶ、大きな教室に成長しています。
岐阜で過ごした四日間
10月17日(金)、名古屋での公演を終えた「イマヌエル オーケストラ」一行は、翌日に岐阜県岐阜市の練習場へと移動。「岐響ジュニアオーケストラ」のメンバーと合流して「歓迎セレモニー」が行われました。
その後「ウェルカム・ゲーム」や、グループ別にお弁当を食べたりする中でメンバーはすっかり打ち解け、合奏練習も和気あいあいの雰囲気で進行しました。
そして、岐阜に滞在した四日間はホーム・ステイで過ごしました。岐響ジュニアのメンバーや、岐阜県交響楽団のメンバーも協力して各家庭に分散しました。
一緒に過ごした時間は互いにとても貴重な体験となり、火曜日の出発時にはどの家庭も名残り惜しい別れになったと伺いました。
交流コンサート
19日(日)は19時から「サラマンカホール」にて、「合同演奏会」が開催されました。
両オーケストラがそれぞれ単独での演奏をして、いよいよ合同演奏のタクトが振り降ろされました。曲目はモーツァルト作曲、交響曲35番「ハフナー」です。
全員の気持ちがひとつになった、若さ溢れるエネルギーが客席にまで伝わってきます。そして実に清々しく、溌剌としたサウンドがホールに響きます。国籍を越えたハーモニーは観客を魅了し、若者たちに惜しみない喝采を贈り続けました。
終演後の舞台裏で交わす言葉、そして最後に撮影した集合写真での表情は、誰もが屈託のない歓びの笑顔にあふれていました。
タイと日本との今後の交流
イマヌエルのメンバーは全日程を終え、無事帰国の途についたとfacebookで報告されていました。
長年イマヌエルへの支援活動を続け、今回の来日ツアーの実現に多大な尽力をされた「NPO法人 シャイン・フォー・ユー」の加古川成子 理事長は、この活動についてWebにこう記しています。
私たちの願いは、音楽教育という小さな種をまき、子どもたちの心が豊かに育っていくこと。そしてその音楽が、子どもたち一人ひとりの未来を照らし、やがて地域全体を元気にする力になると信じています。
私たちが目指すのは、ただ演奏家を育てることだけではありません。音楽に関わるさまざまな仕事や可能性を探ることで、子どもたちの将来の選択肢を広げることも、大切な目標のひとつです。さらに、音楽を学ぶ中で、仲間と協力する力やリーダーシップ、そして自ら考え行動する「主体性」を育むことも、私たちは大切にしています。
音楽の楽しさを通じて、未来を担う日本、そして世界中の若い世代に勇気と希望を届けたい。私たちは、子どもたちの笑顔があふれる世界を目指して、これからも歩み続けていきます。 (抜粋)
交流コンサートで聴いた純情清廉なモーツァルトの響きが、今もまだ耳に残っています。
今回の交流を礎として、今後もタイと日本の音楽交流、そして心の交流が長く続くことを心から祈っています。そしてNPO-WFAOもその一助となれることを願っています。










