「第1回アジアユースオーケストラフェスティバル」参加報告

2023年6月30日(金)~7月2日(日)
台湾/桃園市中壢芸術館

〈指揮〉山路 譲(中壢青少年管弦楽団音楽監督)、張 廷鴻
〈ゲストコンサートマスター〉
 三浦章宏(東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター)
〈演奏曲目〉
 ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調(三浦氏による弾き振り)
 台湾民謡  他

 約3年前から始まった新型コロナウイルスの影響により、音楽による国際交流は大きな制約を余儀なく受け続けましたが、このたび「第1回アジアユースオーケストラフェスティバル」が台湾にて実現しました。このフェスティバルには、韓国やシンガポールなどからも参加し、日本から20名ほど参加しました。10代から20代の若手メンバーが中心となって参加し、久しぶりの海外渡航や初めての海外メンバーとの演奏という方も多く含まれていました。
 ホストオーケストラは、台湾の桃園市を拠点とする「中壢青少年管弦楽団」が務めました。「中壢青少年管弦楽団」には、コンサートで指揮を務めた張廷鴻氏を始め、過去に「トヨタ青少年オーケストラキャンプ(TYOC)」に参加して、ジュニアオーケストラの演奏活動を通じた国際交流の経験をもつメンバー(卒業生を含む)が在籍しています。そして今回、韓国・シンガポールからの参加メンバーもTYOCの卒業生でした。その経験から、彼らは今回の演奏会に特別な思いを抱いていました。「TYOCで学んだことを台湾でも活かせるのではないか」、「新世界を台湾でなぜ演奏するのか」。台湾でこのようなオーケストラフェスティバルが開催される意義や、再び仲間たちと音楽を共有できる喜びを噛みしめながら、フェスティバル当日を迎えました。

 ゲストコンサートマスターには、TYOCで長年講師を務める三浦章宏氏(東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター)をお迎えして始まりましたが、合奏に慣れていないメンバーも多く、緊張感が漂う中での苦労もありました。しかし仲間たちと久しぶりに再会し、近況報告や将来への希望を共有する中で相互理解を深め、演奏も驚くほど向上していきました。
 コンサートは、楽器演奏の経験が少なくて本格的なオーケストラに参加できない、若い演奏家(最年少は4歳の少年!)を主役とする3曲からスタートしました。

 続いて三浦氏を迎えてのJ.S.バッハの「ヴァイオリン協奏曲第2番」では、TYOCで経験を共有したメンバーたちを中心に編成されたこともあり、同窓会のような雰囲気も感じられました。
 後半では、ドヴォルザークの「新世界より」が演奏され、楽団員たちの緊張と観客の期待が最高潮に達しました。そして40分後、歓喜の拍手と「ブラボー」という称賛の声が鳴りやまず、アンコールでは台湾民謡「高山青」と「ウィリアム・テル」序曲の終盤(「スイス軍の行進」)が演奏され、大盛況の裡に幕を閉じました。

 「第1回アジアユースオーケストラフェスティバル」は、アジアの若者たちが新たな交流の輪を形成し情熱を共有していることが実感できるなど、コロナ禍による停滞を乗り越える絆の深さや、将来の明るい未来を実感させる素晴らしい機会となりました。中壢青少年管弦楽団音楽監督として指揮者を務めた山路譲氏は「この演奏会では、本当に皆さんが音楽を通じて一体感を味わうことができました。台湾でこんなに熱い演奏会が開催できるとは、私たちにとっては想像もできませんでした。そして、次世代の若者たちの間で新たな絆が広がっていることを確信しました。新しいエネルギーが自然に生まれています。」と振り返りました。
 最後になりましたが、今回のフェスティバルでは中壢青少年管弦楽団を始め、多くの方々のサポートをいただきました。特に同楽団の団長を務める張思葳氏や山路美伶氏は台湾と日本を始め、世界各国のアマチュアオーケストラとの連携に長年貢献頂いています。今回もアジア各国のメンバーや現地での調整など運営面で大変ご尽力を頂きました。心より感謝申し上げます。
 台湾の素晴らしい音楽の舞台で、再び皆様と演奏できる日を心待ちにすると共に、NPO-WFAO は音楽活動を通じた国際交流の発展にますますの応援を続けてまいります。