ソウル国際市民オーケストラフェスティバル(SICOF) 参加報告

2017年9月21日(木)~ 25日(月)
於 韓国ソウル世宗文化会館

発表演奏会:JAOオケ
<23日(土) 指揮 河上隆介>

・J・シュトラウス/「こうもり」序曲
・ブラームス/大学祝典序曲
・外山雄三/管弦楽のためのラプソディー

アジア合同オケ
<24日(日) 指揮 イ・ギョング(Lee Kyungkoo)>

・ドヴォルザーク/「謝肉祭」序曲
・ドヴォルザーク/交響曲第9番より第4楽章

 最近のアジアにおけるアマチュアオーケストラの興隆は正に目が離せないといった状況ですが、その中でも、韓国の勢いは際立っていると言えるでしょう。
 2017年9月に行われた『ソウル国際市民オーケストラフェスティバル(SICOF)』はそんな韓国のエネルギーを存分に感じさせてくれるものでした。公益社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟(JAO)の韓国版ともいえるKorea Amateur Musicians Association(KOAMA)が設立されたのは2014年、それから僅か3年で世界フェスティバルを行ってしまったことになります。

SICOFのコンセプト

 このフェスティバルに先駆けること1年、2016年9月1日にKOAMA主催による「世界生活芸術オーケストラフォーラム(The International Community Orchestra Forum)」が行われました。招待されたのはイギリス、アメリカ、コロンビア、南アフリカ、そして日本。つまり5大陸から一国ずつ呼ばれたわけです。
アマチュアオーケストラが十分に発達している先進国から、まだまだこれからという発展途上国まで状況は様々で、お互いの事情を知り、意見交換ができる貴重な機会となりました。
さて、いろいろな国のオーケストラ誕生のプロセスを見てみると、最初にできるのは青少年教育機関としてのジュニアオーケストラであることが意外と多いのです。次に数少ないプロオーケストラ。他の仕事をしながら趣味として打ち込むアマチュアオーケストラの成立には、超えなければならないハードルがいくつもあります。(ちなみに、今の日本のようにちょっと大きな都市へ行けばどこにでもアマチュアオーケストラがあり、市民が自由に参加できるような国は、現在はまだ、ほとんどないと思ったほうがいいでしょう。)
 前置きが長くなってしまいましたが、このアマチュアオーケストラ文化の醸成こそ、SICOFの底に流れているコンセプトです。今回のフェスティバルの仕掛け人である朴(パク)氏が前述のフォーラムで熱く語っていた言葉があります。「アマチュアオーケストラという形態を利用して、その普及を通して、市民の文化レベルを高めたい。」そして、その彼の思いが今回の「ソウル生活芸術宣言」に色濃く出ています。

『ソウル生活芸術宣言』(一部)
全ての人は、自分の感情や考えを芸術によって表現する自由と権利があり、したがって私たちは皆、生活の中で、いつでもどこでも芸術を創造し楽しむ生活芸術家であることを宣言します。
1.(生活芸術の定義)
生活芸術は、少数の専門芸術活動ではなく、全ての一般市民の自由で自発的な芸術活動です。
5.(生活の芸術化)
生活芸術家は芸術活動を通じて、主体的生活の価値と意味を高め、日常の活力を取得します。
6.(多様性を追求)
生活芸術家は自我を表現するために、自身と他の方の存在と思想を尊重し認めます。
7.(社会の責任)
社会は、社会を構成している全ての人々の自立的な生活芸術活動を奨励して人生の価値を高めるように補助するべきです。
9.(世界市民の連帯)
生活芸術家は、世界の生活芸術家との交流・協力を通じて、世界の市民的生活の普遍的価値の向上を図ります。
 【出典:SICOFプログラム表紙裏、2017年9月(原著は韓国語と英語)】

ツアー

 さて、年が変りKOAMAからJAOにオーケストラとして参加してほしい、という要請がありました。それを受けて、全国から募集。少し時間はかかりましたが、最終的に55人のプレーヤーが集まり3人のスタッフと共にソウルに入ることができましました。
会場となった世宗(セジョン)文化会館の威容は目を見張るものがありました。さらに宿泊施設であるマリオットホテルも大変豪華で、このフェスティバルにかけるKOAMAの意気込みが感じられました。また一方で、担当してくれたスタッフの皆さんの手厚いもてなしもとても印象的でした。通訳の李(イ)さんは、毎回違う種類の食事をセットしてくれ、メンバーはおいしい韓国料理を満喫することができました。さらに、その堪能な日本語で、全てのトラブルを解決、お別れのときにはメンバー全員から大きな拍手で送られました。
 オーケストラの練習は夜9時まで行われました。その成果もあり、23日のJAOオケステージは大成功。特に最後に演奏した「管弦楽のためのラプソディー」は大喝采を浴びました。24日のアジア合同オケ(韓国、フィリピン、日本)も最高の演奏でした。ただ、ちょっと寂しかったのは交流が思ったよりも少なかったことです。そして、フェスティバルの最後を飾ったのは韓国チームの巨大なオーケストラ。私には、一時代前、早く外国に追いつきたいと気負っていた日本の姿が重なりました。
こうして日韓交流の輝かしい1ページを記し、アジア発展の予感を漂わせ、フェスティバルは無事にその幕を閉じました。
最後に、ツアーに参加し、素敵な演奏を披露すると同時に、旅行中の数々のアクシデントにも笑顔で対応し、心温まる交流をして下さった皆様に、心から感謝申し上げ、レポートを閉じたいと思います。